Isetta 判官びいき
Isetta。イセッタ。キャビンスクーターなどと呼ばれた小型、簡便な車のひとつで、ボディの前面がそのままドアとして開閉されるアイディアをもって人々を驚かせた。ミッレ・ミリアにはそれぞれの時代に応じて様々なクラスが設けられていて、たとえば戦争前の 1935 年には、代用燃料による車両のクラスというのがあった。代用燃料の車というのは、日本でも多く見られた木炭車であって、 トップの車から丸 1 日遅れてブレシアに走り着いたそうである。戦後しばらくはそのキャビンスクーターのクラスがあって、フェラーリやランチアに混ざって走るイセッタを見ることができた。現代のヒストリック・イベントでも、イセッタは毎回のように参加しているが、この小さな車が走ってくると、コース脇ではフェラーリにも勝る大歓声が沸き起こる。どうやらイタリアの人たちは、判官びいきのところがあって、小さなものや非力に見えるものを盛んに応援する傾向がある。同時に、彼らは赤い車に熱狂する。戦前のアルファ、戦後のフェラーリ、マセラティなどはイタリアのナショナルカラーである赤に塗られているのが普通だからだ。そこで、他の色、たとえばブリティッシュ・グリーンに塗られたジャガーのドライバーなどが、少々落胆することにもなる。
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