Maserati マセラティ
Maserati。マセラティ。彼らは今度こそミッレ・ミリアに勝つのだ、と意気込んでいた。1957 年のイベントの前である。新たに V 型 8 気筒、4.5lのエンジンを開発して、ライバル達を凌ぐスピードを身につけた。ワークス・ドライバーはスターリング・モス、それにジェンキンソンがナビゲーターを務める。事前の準備も今度ばかりは入念に行って、万事遺漏がない。はずであった。モスとジェンキンソンのふたりも、スタートしてブレシアの町を向けたところでスピードに乗ると、" それまでの年とは周囲の景色の飛び去り方が違う " のに気づいて、大いに自信を深めた。 その直後、カーブの手前でモスがブレーキングした時、異変が起こった。ブレーキペダルが折れたのである。車には重量を軽くする目的でいたるところドリルで穴があけられていた。ブレーキペダルまでやるのは少しばかりやりすぎであったのだろう。幸い、モスは何とか車を止めることに成功したが、その場でリタイアするより他に手はなかった。彼らが失意を抱えてブレシアまで戻ると、マセラティの人たちは、" みな、泣いた " と伝えられている。 このモスのマセラティ450S がつけていた番号(numero)は 537、参加車の中で一番最後のスタートであった。
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