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2005年9月1日(木) 大きいだけでいくじのない液晶モニター

キヤノン・EOS 5D(β機) + EF14mmF2.8L
 フルサイズ撮像素子を搭載したEOS-1Dsの後継機種としてEOS-1Ds Mark2が発表になりました。ところが“予想に反して”価格が旧モデルとほとんど変わらず90万円近くしました。相変わらずどうしてこんなに高い価格になるのですか、と開発の責任者に聞いたところ、1Dsを出したときからフルサイズの撮像素子とローパスフィルターの価格がいっこうに下がらない、下げられない、いまだに大変に高価である、こうした状況は当分続くでしょう、との返事でした。この応えを信じていたぼくは、もし今後、フルサイズのカメラが出てきたとしても ―― 1〜2年後には確実に出てくると考えていましたが ―― そう簡単には安くはできないだろうと思っていました。ですから、EOS 5Dが発表されてそれが40万円以下だと聞いて、なんだなんだいったいどーしたんだ、と驚いてしまいました。




 2.5インチ型の大型液晶モニターを搭載しています。広視野角の液晶モニターで、上下左右斜めからでもダントツによく見えます。ややコントラスト、シャープさには欠けますが、じつにきめ細かい階調豊かな“上品な画質”です。メニュー画面の文字も大きくクリアーで (文字フォントも新しくしたそうです) とっても見やすい。ところが、この見やすさは「真っ赤なウソ」でありまして、室内や暗い場所ではよく見えるんですが、一歩、室外に出て明るい場所でこれ見るととたんに、なんともイクジのないどんよりとした画面になります。晴れた日の戸外で撮影をしていて、いま写した画像を確認しようとしたら「あれっナンにも写ってないじゃないか…」と慌てたぐらい見えませんでした。思わず太陽のほうにカメラを向けて画面を透かしてみようとしたほどです (少し大袈裟か)。急いで液晶モニターの輝度をめいっぱい上げましたが、風呂の中で屁をこいているような、ぽわーんとした手応えしかありません。
 この液晶モニターの見え具合をのぞけば、EOS 5Dはいやはや良くできたカメラでした。APS-Cサイズカメラには戻れなくなりそうです。EOS-1Ds Mark2のユーザーはきっと悲しい (悔しい) 思いをするほどに良くできたカメラです。だからこそ、よけいに液晶モニターのことだけが気になってしまうのです。…β機だからかなぁ、でもソレはないだろうなあ。

2005年9月2日(金) 

2005年9月3日(土) キヤノンにとっては“大英断”

キヤノン・EOS 5D(β機) + EF16〜35mmF2.8L
 この5Dから、シングル撮影モードのときシャッターボタンの半押し (SW1) のままで次のシャッター (SW2) が切れるようになりました。些細なことですが、こうした基本操作系の変更は「大改革、大英断」なのです。いままでのキヤノンの一眼レフカメラでは (フィルムカメラでも)、コンティニアス撮影モードでは可能でしたがシングル撮影モードのときは、シャッターボタンからいったん指を離してからでないと次のシャッターを切ることができませんでした。5DからはSW1のまま、少し指を押し込むことで何度でもSW2にいくことができるようになったのです。他メーカーの機種では“当たり前”の、この機能がキヤノンのカメラにはいままでなかったのです。
 これによってどんなメリットが生まれるか。たとえば、シャッターボタンの半押しでピント位置と露出を固定したままでシャッターチャンスを狙って次々とタイミング良くシャッターが切れます ―― キヤノンのカメラはシャッターボタンの半押しでAF/AEロックされます。




 フルサイズのデジタル一眼を使うと、素晴らしい画質の写真が得られる、とか、写真がうまくなる、などといった“幻想”を抱いている人がいるそうです。それはちょっと違いますね。画質でいえば、APS-Cサイズクラスのカメラと比べて遙かに優れているとは言い切れません。フルサイズを使えば、写真がじょうずになる、なんてことはあり得ません。もちろん、フルサイズの1280万画素ですからそれなりの素晴らしい階調描写力と解像描写力を備えていますが、見比べて“一目瞭然”と言えるほどの違いはないと思います。むしろ5Dのフルサイズ画質とAPS-Cサイズ画質との「差」は、充分に撮影技術や撮影センスでカバーできるほどのものでしょう。フルサイズ一眼レフの魅力は「画質」ではなく、もっと別なもののような気もします。
 もし強いてAPS-Cサイズカメラとの画質の違いをいうとすれば、高ISO感度でのノイズの違いぐらいでしょうか。特別に5Dが高ISO感度でノイズレスなのかもしれませんが、条件によってはISO1600でも平気で使えますね。ところで、試しに手元にあった1Ds Mark2と高ISO感度で撮り比べてみましたが、はっきり言ってこれは「5Dの勝ち」でありました。というわけでノイズアレルギーの人にとっては5Dは、文句なしのベストバイのカメラでしょうね。

2005年9月4日(日) 

2005年9月5日(月) 

2005年9月6日(火) 

2005年9月7日(水) 秋山亮二さんの写真展

キヤノン・EOS-1D Mark2 N + EF70〜200mmF2.8L IS
 モデルチェンジされた1D Mark2 Nは、5Dと同じ2.5インチ型広視野角LCDにしたことと、今後のキヤノンデジタル一眼の絵づくりのデファクトスタンダードになるであろうピクチャースタイルに対応しました。1Ds Mark2もそうですが、1D系のカメラを使って思い通りの仕上がりの画像 (JPEG) を得るためには、現像パラメータとカラーマトリックスのそれぞれで複雑なパラメーターの設定をしなければなりません。これがなかなか難しい。ところが新1D Mark2 Nにピクチャースタイルが導入されまして、これを利用することでイッキに使いやすくなり「1D系ってこんなにカンタンンにキレイに写るのか」と少し驚く。
 5Dほど使い込んではいないのでハッキリしたことは言えませんが、ピクチャースタイルのおかげでしょうか旧1D Mark2の画質よりも、ナンだか相当によくなったような印象を受けました。




 秋山亮二さんの写真展「なら」が、いま新宿のコニカミノルタプラザギャラリーでおこなわれております。12日までです。これは必見です。ローライフレックスとカラーネガで奈良をスナップした写真でして、ぼくはこれを見てうーん唸らされました。さすが秋山さん、じつにうまい写真なのです。約60点ほどのカラー写真ですが、どれもこれもがすばらしいスナップ写真で、プロ写真家の高い技量と優れたセンスをじゅうぶんに感じさせてくれます。昔から秋山亮二さんの写真は、視線が優しくてヒューマンに溢れていて、ちょっとウイットがあって、とにかく写真を見ているだけで、わけもなく人間が好きになってしまいます。今回の「なら」はその秋山さんの真骨頂だと思いました。
 カラーネガフィルムからのプリントがこれまたいい階調描写なのです。銀塩フィルムまだまだ健在であります。そして、あの使いにくいローライフレックスで、よくもまあこんなにじょうずにスナップできるものだと、そのことにも唸らされました、うーん。

2005年9月8日(木) フルサイズより小さくAPS-Cサイズより大きいAPS-Hサイズ

キヤノン・EOS-1D Mark2 N + EF24〜105mmF4L IS
 EOS 5Dと一緒に、EOS-1D Mark2のマイナーチェンジ機種である1D Mark2 Nも発表されたのですが、5Dのほうに注目が集まりすぎてこちらのほうはイマイチ注目度が低いようです。いまとなっては、APS-Hサイズというちょっと“中途半端なサイズ”の撮像素子 ―― と言ったら「撮像素子としては理想的、最適なサイズなのですよ」とキヤノンの人に怒られましたが ―― のせいもあるのでしょうか、フルサイズとAPS-Cサイズカメラに埋もれているような気もしないでもないです。とはいえ、一部の報道カメラマンたちから熱烈な支持を受けているそうです (キヤノン談) 。
 キヤノンはこうした撮像面積の異なる3種類の機種を“いつまで”売り続けるのでしょうか、そのへんがちょっと気にはなりますけれど。




 フルサイズのEOS-1Ds Mark2も、旧型のEOS-1D Mark2も使いこなし、撮影のポイントの一つは「現像パラメータ」と「カラーマトリックス」のどのモードを選びパラメータ設定をどのようにするかではないでしょうか。RAW撮影をする人はそれほど気にしなくてもいいでしょうけれど、ぼくのようにJPEG派はその設定を誤るとイノチトリになります。そのうえ、1D系は20DやKiss Digital N、そしてEOS 5Dなどとメニュー構造がぜんぜん違います。はっきり言って難しいし複雑です。そのややこしいメニュー設定が1D Mark2 Nで、あたらしくピクチャースタイルが導入されて (一部だけですが) 相当に改善されました。
 1Ds/1D Mark2を使うときにぼくは、「現像パラメータ」ではトーンカーブは標準、シャープネスは3、コントラストは+1にしてこれを「セット1」として保持、「カラーマトリックス」は高彩度を選び、色空間はsRGB、色の濃さは標準、色合いは0のディフォルトにして撮影をしています。被写体条件によってときどきこれらのパラメータを変えることもあります。このように設定が実にめんどうだったのですが、ピクチャースタイルを使うことで格段に楽になりました。…ま、1D系の操作を知らない人には、ナンのこっちゃ、でしょうけれど。

2005年9月9日(金) 

2005年9月10日(土) 

2005年9月11日(日) 

2005年9月12日(月) 大きな液晶モニターは(やはり)イイですね

サンヨー・Xacti DSC-E6
 3.0インチ型のデカい液晶モニターを搭載しております。屈曲光学式の3倍ズームレンズを搭載してカメラボディは薄型です。大型LCDの見えはけっして悪くはありません。明るい場所でもまぁそこそこ見えます。とにかくデカいのがいいです。フレーミングするにしても、とてもやりやすい。ちっちな見えにくい液晶画面を見ながらちまちまやるのとは大違いです。E6のLCDは微反射型の23万画素低温ポリシリコンTFT液晶です。ところでサンヨーといえば有機ELディスプレイなのですが、それを搭載したデジタルカメラはもうちょっと先になりそうですね。しばらく元気のなかったサンヨーですが、この機種など見ているとようやく(少しだけですが)元気を取り戻しつつあるようでよかった。この機会にぜひ、カメラデザインとメニューGUIなどを根本的に見直して良い方向に行って欲しいものです。




 さて、このE6には「タッチフォーカス」シャッターとサンヨーが名付けている機能が“世界初”で採用されています。シャッターボタンに軽く指先が触れるだけで、シャッターボタン半押しと同じ状態になります。フェザータッチとでも言いましょうか文字通り“軽くタッチ”するだけです。シャッターボタンに指先が触れると、ボタン横のちっちゃなLEDランプが紫色に点灯しフォーカシングが始まる。ピントが合うとピンッとかん高い音がします。そのまま指を軽く触れたままだとAFロックしています。その状態からさらに“軽く押し込む”とシャッターが切れます。従来のシャッターボタンの操作感触とはまったく違いますので、はじめはえらく戸惑いました。シャッターボタンに指をかけたとたんシャッターが切れてしまって「おーっとっとっ」てな感じです。でもすぐに慣れてしまいました。シャッターボタンの半押し (SW1) から次に押し込んでシャッターを切る (SW2) までの「ストローク」の調整がすこぶる良くできていて違和感をほとんど感じさせません。

2005年9月13日(火) 

2005年9月14日(水) 写真はもっと“自由”になるべきです

サンヨー・Xacti DSC-E6
 大きな液晶モニターを搭載してカメラサイズをぎりぎりまで小型化しようとしていますからどうしてもホールディングに無理が出てきます。タッチフォーカスのシャッターボタンのためでしょうか、カメラをホールドする両手もついつられて“タッチホールド”してボディを軽くもってしまいます。ボディ表面がツルツルしてるからよけいですが、危うくカメラを落としそうになりました。このE6をしっかりとホールディングして撮影するには ―― ちょっと研究しました ―― まず左手の親指と人差し指でボディ上下を挟むようにがっしりと持ちます。で、右手の親指を思い切って3.0型液晶画面の端っこにかかってもいいですからしっかり押しつけてカメラを構えます。こうすればとっても安定したホールディングができました。親指で画面の端が隠れてしまうのが欠点ですが、少しズラしたりしてフレーミングすればそれほど気にはなりません。




 カメラ内蔵の液晶モニターが大型になったりキレイに見えるようになると、撮影した写真をわざわざプリントなどせず、その液晶画面で鑑賞して愉しむ人も増えてくるのではないでしょうか。それはそれでイイんではないでしょうか。写真はプリントして鑑賞するものだ、とか、プリントしてこそ写真なのだ、とかムツカシイことを言う人がいますが、どんなふうに写真を愉しもうがそれこそ個人の勝手です。フィルムカメラからデジタルカメラになって「カメラ」そのものが大きく変貌しているのですから写真の鑑賞方法が“新しく”なってもナンの不思議もありません。
 とはいえ、ぼくは写真はやはりプリントして鑑賞するほうが“写真らしい”と考えていますが、しかしそれはぼくが古い人間だからかも知れません。写真は時代とともにどんどん変化していきます。とうぜんながら写すスタイルも、鑑賞するスタイルも変化していきます。そもそも写真が四角である必要などまったくないわけでして、丸でも三角でもいっこうにかまわない。結果がおもしろければいいんです。写した本人が愉しく、その写真を見た人が愉しければそれでイイじゃないですか。古くさい昔からの「写真的観念」でこれからのデジタル写真を縛ってはいけないと思います。表現は自由奔放であるべきです。

2005年9月15日(木) 

2005年9月16日(金) 

2005年9月17日(土) 

2005年9月18日(日) 

2005年9月19日(月) 

2005年9月20日(火) たいへんに優れたデザインのカメラです

キヤノン・IXY DIGITAL L3
 L1、L2と単焦点レンズを内蔵していましたが、L3でようやくズームレンズが搭載されました。38〜90mmまでの2.4倍ズームですが、従来機種とほぼ同じ大きさのボディにズームを組み込んだのは立派です。やはり、このテのデジタルカメラにはズームレンズは必須条件ですね。この、ズームレンズ内蔵しただけで使い勝手はL1、L2に比べて数倍以上向上しています。液晶モニターは旧型の1.5インチ型から1.8インチ型になりましたし、バッテリー充電やTV出力、PC接続、ダイレクトプリントの機能を備えたクレードル式の「カメラステーション」と、それをワイヤレスでコントロールする“リモコン”も付属しています。あれやこれやで、旧型とは大幅に違ってなかなかグッドなカメラに仕上がっております。




 カメラのボディデザインは秀逸です。仕上げも、すこぶるよろしいです。L1、L2と並べて見比べると、それら旧型が古色蒼然として見えるほどにL3のデザインは斬新で未来的で、そして先進的です。カラーバリエーションは4色です。“安全パイ”のシルバーモデルはなく、すべてがパンチのあるカラーモデルばかりです。ブラック、レッド、ブロンド、そしてバイオレットです。中でもバイオレット (正しくはモルフォバイオレット) がイイです。従来のどんなカメラにも使用されたことのない思い切った紫色でして、レンズ回りのクロームメッキの金属マテリアルとぴったりマッチしています。ややもすると下品になりがちな色とカタチの組み合わせですが、このカメラをデザインしたデザイナーの高い技量とセンスを充分に感じさせるすばらしい仕上がりになっています。持っているだけで心華やぐ、うきうきと愉しくなり、ついつい見せびらかしたくなるカメラです。
 なお、モルフォバイオレットカラーはたった一万台の限定モデルだそうでして、もしL3を購入候補にあげるならナンバーワン候補は文句なしにモルフォバイオレットだと思います。

2005年9月21日(水) 優れた超小型ズームレンズです

キヤノン・IXY DIGITAL L3
 初代のLが発表されたときのことですが、「どうして28mmレンズを搭載しなかったのかッ」とキヤノンの企画担当者に問い詰めているオタクっぽい人がいました。でもそのとき、ぼくは、広角レンズにしなかったほうが正解だった、と思っていました。おそらく、Lの企画コンセプトは携帯電話に負けずとも劣らぬ小型軽量ボディのカメラながら、しかし画質は携帯電話で写すのとは“大違い”というものであったのでしょう。Lの購入ターゲットユーザーもそうした人たちにマトを絞っていたはずですから、単焦点28mmレンズなど搭載してしまったのではなんのコッチャになってしまいます。広角レンズの描写に馴染みのない人たちが、28mmレンズで人物を撮影したりすれば予想以上に「小さく」写ってしまいまい不満が出ます。Lのユーザーは、狭い場所を広く写すなんてことよりも、人物を思ったようにキレイに写したいわけですよ。




 初代Lが発表されたときに、むしろぼくが疑問に思ったことは「なぜズームレンズを搭載しなかったのだろうか」というものでした。3倍である必要はなくズーム比2倍で充分でした。でも、キヤノンは敢えて単焦点レンズにした。これもおそらく、の想像ですが、その時点ではLのボディサイズに搭載できるような超小型のズームレンズを作ることができなかったのではないでしょうか。きっと企画担当者としてはズームレンズを組み込みたかったのではないかと思います。でもズームを搭載すればボディサイズが大きくなってしまう。小ささを取るか、機能を取るか。ぼくなら、文句なしに小ささを優先させます。でも担当者は、いずれはズーム内蔵、と心に決めたはずです。というわけで (勝手なぼくの想像ですが) ようやく超小型のズームレンズが出来上がって、L3にそれが搭載されたのでしょう。4群4枚のシンプルな構成のズームですが、4枚レンズのうち3枚が非球面レンズなのです。

2005年9月22日(木) 

2005年9月23日(金) 

2005年9月24日(土) 28〜200mmズーム+手ブレ補正機構+小型軽量薄型

リコー・Caplio R3
 つい先日、リコーから“ビッグ”で“スモール”なコンパクトデジタルカメラが2機種発表になりました。ひとつは28mm単焦点レンズ内蔵のGR Digitalです ―― このカメラのお話はいずれゆっくりと ―― 。
 で、もうひとつが、このCaplio R3です。28〜200mm相当の高倍率ズームを内蔵しながらも、そのわりにカメラボディは薄く (約2.6センチ) 、小さく (約9.5×5.3センチ) 、軽い (約135グラム) 。さらに、そのズームレンズはといえばメインスイッチをOFFにすると薄型ボディ内にまるで手品のようにすっぽりと収まってしまう。つまり収納時にはレンズの出っ張りのまったくないフラットボディになります。スイッチONから撮影スタンバイ状態までの、いわゆる起動時間も高速であります。液晶モニターは大きな2.5型を搭載していますし、明るい戸外での視認性もそこそこよろしい。




 そして、R3には手ブレ補正機構が備わっております。
 手ブレ補正機構としては大別して現在、ふた通りの方式があります。レンズ内の一部の光学レンズを動かして手ブレ (カメラブレ) を補正する方式 (光学式) と、撮像素子そのものを動かしてブレを補正する方式 (シフト式) です (レンズ光学ユニットに撮像素子を固定して“レンズごと”動かす方式を採用しているカメラもありますがいまのところあまり一般的ではありません)。光学式はキヤノン、パナソニックなど多くのカメラやレンズで採用されていますが、シフト式はコニカミノルタのみでした。
 R3の手ブレ方式は、そのコニカミノルタと同じ方式の撮像素子シフト方式です。詳細は不明ですが、コニカミノルタから技術供与を受けたというものではなく、リコーが独自で開発した (エラいっ!) シフト方式のようです (CCDを動かすアクチュエータが根本的に違う、らしい)。ま、かくかくしかじか、ブレ補正機能あれこれについて話せば、ぼくはキリがなくなりますから本日はこのへんで。

2005年9月25日(日) がんじがらめの特許を避けての手ブレ補正搭載

リコー・Caplio R3
 R3はR2のモデルチェンジ機種です。ボディサイズはひとまわりほど小さくなっていまして、外観はデザインは“かなり”良くなっています。基本的にはフラットボディなのですがグリップ部が少し曲がっていて、これがイイ味を出しています。ホールディングもしやすくなっている。ボディの仕上げも (いままでのリコーのカメラとは思えぬほど) 良くなっていました。旧型のR1やR2はボディ前面のメインスイッチを兼ねたスライドレバーでON/OFFをおこないましたが、このR3ではボディ上部に押し込み式のごく普通のスイッチを配置しています。これだけで、デザイン的にもかなりすっきりスマートな感じになりました。そのR3のメインスイッチは小さくてちょっと押しづらいですけれど、あのスライド式のスイッチは少し苦手でしたからぼくはこちらのほうが好感が持てました。R1やR2のユーザーにとっては不愉快でありましょうけれど、比べるとR3は“格段に”良くなっています。ぼくには月とスッポンぐらいの“差”を感じました (機能や、画質やオートホワイトバランスの精度も含めて)。




 R3の手ブレ補正はCCDを上下左右に高速微細にスライドさせてブレを補正するもの。レンズシフト方式と同じくブレ検知は角速度センサーを使っています。手ブレ補正機能を備えた既存のカメラでは、シャッターボタンを半押ししたとき (またはメインスイッチON状態で) 常時手ブレ補正機能が働いているモードと、シャッターボタンを押しこんで露光される直前から手ブレ補正が働くモード、のどちらかが選べる機種が多いです。が、このR3ではそうした切り替え機能はなく、常にシャッターボタンを押し込んだあとに手ブレ補正が働くモードのみです。もちろん、手ブレ補正機能をON/OFFすることはできます (シャッターボタン横の小さな手ブレ補正ボタンを押す ―― これがまた押しにくいのだけど)。
 ところで「シャッターボタンの半押しでブレ補正機能を作動させる」ということがじつは、あるメーカーの特許でして ―― 手ブレ補正機能については、まるで投網をかけるように幅広くきめ細かく特許申請がされておるようです ―― だから便利だからといっておいそれと使えるというモノではないのです (でありますからオリンパスもペンタックスもエラく苦労しているんです)。ことほど左様に、デジタルカメラには小さなことから大きなことまで特許でがんじがらめになっておりまして、ナニをするにしてもそりゃあタイヘンなんですよ。

2005年9月26日(月) 

2005年9月27日(火) 大丈夫か、ダブルリトラクティング方式

リコー・Caplio R3
 前モデルのR2は28〜135mm相当の4.8倍ズーム内蔵です。そのボディの厚みは約2.5センチでした。でも、R3では28〜200mm相当の7.1倍ズームになりましたがボディ厚みは約2.6センチとわずかしか大きくなってはいません。メインスイッチをONにしてボディから繰り出してくるレンズを見れば、「よくこのボディの厚みにレンズをおさめているよなぁ」と感心してしまいます。さらに、カメラを手にしてよく見ればわかることですが、収納されたズームレンズの真後ろには2.5型液晶モニターがあります。ということはレンズ部とLCDとの隙間なんてほとんどありません。にもかかわらず撮像素子(500万画素、1/2.5型CCD)とシフト方式の手ブレ機構も組み込んでいるのです。いやはや、これには驚きました。
 ということは、デジタルカメラをコントロールするための主要パーツ(電子基板など)は、いったいどこに置いているのか、といいますと、グリップ部のストロボの下あたり、電池とメディアの収納スペースの“隙間”に埋め込んでいるのです。




 「すごいねえ、よくもまあこれだけのスペースに、こんなもんをツメめ込みましたねえ…」と、ぼく。すると担当者は「ええ、ま、ちょっとタイヘンでしたけど、できました」とシレッとして返事をしました。28〜200mmズームレンズはR2の28〜135mmレンズと同じく収納時に構成レンズ群の中の一部レンズ群を鏡筒外に逃がす「一部レンズ待避型」のズームレンズなのです。こうすることで収納したときに縮んだレンズの“厚み”を薄くできます。メインスイッチONでレンズが繰り出すと同時に生じたスペースに、横に待避していたレンズがするりっと入り込みます。もともと大変にトリッキーな仕組みなのですが、R2では“シングル”だったのをR3ではこれを“ダブル”でやっています。ダブルリトラクティング方式です。
 こうしたレンズ待避型ズームはペンタックスやフジも採用していますが、いずれもシングルタイプです。ダブルタイプ(ふたつのレンズ群を可動)はおそらくR3がはじめてではないでしょうか。そもそもレンズ群を可動させるということ自体、たいへんにリスキーです。それが2カ所も、ですからユーザーとしては不安にならざるを得ません。「その不安定さを今回はクリアーして高い精度と耐久性を確保しました (と、リコーは自信満々でした)」 、といいますから、ここは“期待”してますよ、ヒグチさん。

2005年9月28日(水) 

2005年9月29日(木) 

2005年9月30日(金) 


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